山本 文緒

ふいに山本文緒の本が読みたくなって
閉店間際の本屋へ駆け込んだ。
ひどい雨で地面は浸水し、つま先立ちで歩かないと
ならないほどだった。

昔伊藤家の食卓かなにかでやっていた、
絶対にハネのあがらない歩き方というのを試してみたけれど
すんでのところでティッシュ配りの若い男を突っぱねた際
深い水溜りにはまってしまい水泡に帰してしまった。

やっとの思い出本屋についたころにはすでに山本文緒を読もうという
意気込みはすっかり遠のいていて、たかが恋愛小説のために
こんなずぶ濡れになって何してるんだろうなぁ自分、と
遠いところからうっすらそう思う。
それでも本を買わずにはこのずぶ濡れの対価が得られない!と
カバーが一番綺麗だった文庫本を3冊選んだ。

駅に向かう道すがらいろいろな人のいろいろな言葉の断片を聞いた。
・・・おかあさん・・・これから・・・間違えた・・・おなかすいた・・・待ち合わせ・・・
誰かが誰かに向けたこれらの言葉は、それぞれにあたしの知らない意味があって、あたしに届いてもあたしに向けられることはなく、これからも絶妙な誤差を保ちながら同じ未来の中に流されていくんだろう。

駅のホームでネズミをくわえたネコに会った。
もうなんとなく山本文緒だけじゃ足りないなと思った。
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by eringish | 2005-05-30 22:29 | ワシ的詩文  

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