終電

終電の高尾駅の前におじさんが仰向けに寝ていた。
おじさんとして長いこと生きてきた雰囲気だった。
暇だから話しかけた。

「おじさん危ないから起きたほうがいいよ」
おじさんは目覚めなかった。
「おじさん、バスが来るよ、車道だから危ないよ」
おじさんが少し目を開けた
「ここがどこだか知らないがお前いい女だな」
私はおじさんに興味を持った。

「おじさん、ここ高尾だよ、タクシーあるうちに帰ったほうがいいよ」
「じゃあお前んちに泊めてくれるか」
「うちはだいぶ遠いから無理だね」
「遠いって、お前それはこっからタクシーで156万くらいするのか」
「そんなにはしないけど、おじさんちは高尾からそんなにかかるの?」
「そんなにはかからないけど…なんだおまえの家は高尾の山奥か、
高尾って玉じゃないだろう」
「おじさん明日会社でしょ、今日月曜日だよ、大丈夫なの?」
「いいの、おじさんはね~、フランスもドイツもいろーんなこと経験してきたの。
だからね、そんなこといいの。お前ね、お父さんと子供、何人いるの。」
「子供はいないよ笑。おじさんバス来た、あぶないよ」
「いいの。おじさんはいーーーーの。おじさん今どこにいるか知ってる?」
「え、高尾だよ、ここ」
「ち・が・う~ 大空の下にね、いるんだよ」
「あー… ほんとだ…」
星の見えない生ぬるい夜だった。

じきにおじさんのずんぐりとしたシルエットが照らされ
私は急に最終バスのほうが大切になった。
「おじさん、あたしバス来たから行くね」
「ああ、お前はほんと優しくていい女だな」
かつて誰かに向けられた最後まで優しくて哀しい言葉を背に、
眠りを求めて家路を急いだ
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by eringish | 2009-06-23 02:21 | ワシ的発言  

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